ゴスペル、その意味や英語の歌詞の意味とは
- BCI Gospel
- 2024年6月8日
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更新日:2024年10月8日

ゴスペルとは何か
ゴスペルの起源はアメリカの黒人奴隷たちから始まります。
17世紀から始まった奴隷貿易によってアメリカに連れて来られた黒人奴隷たちにはほとんど自由がありませんでした。
彼彼女らは白人の所有物であり、農作業をこなすモノとして扱われ、人権はありませんでした。そのような苦しみの中から生まれてきたものがゴスペルです。
ゴスペルは黒人奴隷としての過酷な日常からの解放、自由を願う歌として生まれたのです。
彼彼女らは時に踊りを交えながらゴスペルを歌い、恍惚状態の中で自由を求めました。
そのような恍惚感も人を惹きつけるゴスペルの魅力なのかもしれません。ゴスペルは初めはスピリチュアル(黒人霊歌)という名で知られていました。
スピリチュアルは先にも述べたように奴隷からの解放と自由求めて歌われてきたものです。
そのスピリチュアルがゴスペルへと変化していくのは20世紀になって黒人たちが都市部へ移住するようになってからです。
田舎の農園から出てきた彼らはスピリチュアルが都会での現実には合わないことを知り、もっと現実的で直接的な歌を生み出しました。
それが今知られているゴスペルとして確立されました。
何を歌っているのか
ゴスペルと聞くとたいていの人は英語の歌詞を想像するでしょう。
一体どのような内容なのでしょうか。すでにゴスペルを歌っている人でもその意味を知っている人は少ないかもしれません。
ゴスペルで歌う内容はキリスト教とは切っても切れないものなのです。
ゴスペルの歌詞のなかにはLord(神)や Jesus(イエス・キリスト)といった単語が良く出てきます。これは聖書の神であり、その神を讃えたり、あるいは神に求めたり、願ったりしている内容なのです。
では、何を求めたり願うのでしょうか。
それは黒人奴隷たちが切に願った自由であり、解放です。
彼彼女らのその想いがゴスペルの根底に流れています。
奴隷状態から解放され、自由になったとしてもアンダークラスの生活と現代の都会生活の現実に疲れた黒人たちの生み出したゴスペルは、同じ悩みを持つ私たちの心を打つのかもしれません。
音楽のジャンルとしてのゴスペル
ゴスペルが音楽として認められるには、長い年月つがかかりました。
黒人奴隷から始まったこのジャンルは音楽というひとつの文化として認められず、長い間無視されてきました。
当初スピリチュアル(黒人霊歌)という名で一部の白人たちに認識されていたものを世界的に有名にしたのは、テネシー州ナッシュビルのフィスク大学の黒人学生たちによって組織されたコーラスグループFisk Jubilee Singers(フィスク・ジュビリー・シンガーズ)でした。
彼彼女らの歌は反響を呼びヨーロッパ公演まで行いました。
このスピリチュアルをゴスペルというジャンルにしたのは有名なゴスペル作曲家のトーマス・ドーシーです。
彼はスピリチュアルとブルースそして賛美歌のメロディーを融合し、ゴスペルというジャンルを確立しました。
このゴスペルが多くの教会で歌われるようになって世界中に広まっていったのです。


[参考資料]
北村崇郎 『二グロ・スピリチュアル』みすず書房
森恵子 『教会ベースのゴスペルクワイヤ、その現在と未来アンケート及びインタビュー調査結果から』東京基督教大学
野澤豊一 『変貌するゴスペル・ミュージシャンシップー主流教会とペンテコステ派教会間の相互関係からー』金沢大学
塩谷達也 『ゴスペルの本』株式会社ヤマハミュージックメディア
ジェイムズ・H・コーン『黒人霊歌とブルース』新教出版社、1983年